レコードで紐解く“音楽の楽しみ方” みのミュージックの新刊『みののミュージック』好評発売中!
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みのミュージックによる書籍シリーズの第3弾『みののミュージック』が、今年6月に発売されました。
本作では、音楽の原体験となったビートルズとの出会いをはじめ、モノラル・シングル盤に受けた衝撃、ロックの裏街道に息づく名作群、日本の音楽史の分岐点となった“自作自演”や“コンセプト・アルバム”への考察、さらに“オルタナティブ”なジャンルとして注目している民謡など、みの自身の深い音楽愛が語られています。
これまで数多くの音楽を紹介してきた彼が、長年にわたり蒐集してきたレコードの中から特に思い入れのある作品を選び、その魅力や背景を自らの言葉で丁寧に綴った1冊。
音楽を聴く楽しさや、レコードを手に取る喜びをあらためて感じられる内容になっています。
“忙しさ”と少し離れて、音楽と本でゆっくりと過ごしたくなる季節。
年末のひとときに、お気に入りの音楽を流しながら、みのの音楽談義に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。
Q.“100年先も聴き継がれるべき私的名盤”というテーマを選ばれた理由をお聞かせください。
近年の音楽体験はアルゴリズム由来の出会いが増え、あたかも自分で選んでいるように錯覚してしまう場面が多くなっています。そうした中で、あえて“人間のキュレーション”というぬくもりを感じられる形で音楽を提示する本を作りたいと思い、このテーマを掲げました。
Q.ご自身が「みののミュージック」を通して、伝えたいことは何ですか?
レコードで音楽を聴くって、ある種とても“非合理な行為”で、合理的なポイントはほとんどないと思うんです。
でも、その合理性を超えたところにある贅沢な時間や、コストパフォーマンスとは無縁の音楽との関わり方を、あえて提示したいという思いがあります。
Q.「みののミュージック」を特にどのような方に読んでいただきたいですか?
幅広く手に取ってもらいたいと思っています。音楽を聴き始めたばかりの人に読んでもらえるのも嬉しいですし、ある程度いろいろ聴いてきたマニアの方にも、幅広く音楽を楽しんでもらえたらと思います。
Q. ここは注目してほしいというポイントをお聞かせください。
注目してほしいポイントは、やっぱり“モノラル版の魅力”ですね。今はステレオやドルビーアトモスのような空間オーディオが主流で、その体験ももちろん素晴らしいんですが、モノラルにも独自の良さが確かに存在します。どうしても音質や迫力は現代に向かって進化し続けていて、“最新が一番良い”という価値観を漠然と持ちがちだと思うんですが、モノラルにはモノラルの全く別種の魅力があるんです。その視点をリスニング体験の価値観に加えるだけで、楽しみ方は大きく広がるんじゃないかと思います。
Q. 最後に読者へのメッセージをお願いします。
音楽もそうですけど、そもそも芸術って効率や合理性とは真逆のところにあるものだと思うんです。
昔に聞いて共感した話なんですが、「生き切った金持ちは最終的に筋トレか芸術に行く」という言葉があって。
筋トレは“やった分だけ成果が出る”究極の合理。一方で音楽や芸術は、やったから何かが保証されるわけじゃない“究極の不合理”なんですよね。でもその不合理さの中に、のめり込む動機がある。イントロを飛ばしたりサビをすぐ聴いたりするような、コスパやタイパが優先される現代においても、音楽って基本みんな同じ速度で進むじゃないですか。
だからこそ、その“非合理の魅力”を味わうこと自体が、今の時代ではむしろ貴重になっている気がします。
お腹が満たされるわけでも喉が潤うわけでもない。でも、その無駄ともいえる時間にこそ価値がある。そういう魅力を改めて見つめ直すことが、現代のスピード感の中で、座標を持つじゃないですけど、自分の立ち位置を確かにしてくれる、そんな作用もあるのかなと思っています。