「世界の動画をまとめるYouTuber」—世界記録を更新したぐっぴんという男の情熱

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5月某日、都内某オフィスの会議室で行われた、ある男の撮影現場を訪れた。目前にある机に向かって大量のコインを並べている、その男の名は“ぐっぴん”。UUUMが運営するブランドチャンネル『Video Pizza』でMC兼キュレーターとして世界中の面白動画を紹介する傍ら、自らの体を張って世界記録に挑戦している人物だ。

この日行われていたのは、彼が新たな世界記録に挑戦する様をビデオカメラに収めるというもの。さぞかし緊張感漂う現場なのだろうとやや恐縮気味に訪れた我々に、気さくな笑顔で対応してくれたぐっぴん。そんな彼が、その僅か数分後に始まった撮影の中で行ったのは、「25枚の500円玉を14.71秒(世界記録)以内に積み上げられるか」という挑戦だった(果たして成功したのか否かは、動画の中で確認しよう)。これまでにも彼は様々な世界記録にチャレンジし、5月に公開された「ジッパーを30秒間に204回(世界記録)以上、上げ下げできるか」というチャレンジ動画の中では“361回”という新記録を樹立している。

世界新記録!コイン早積みチャレンジ!
【世界】股間のジッパーを30秒間に204回以上できた!?

 未知なるポテンシャルを我々に見せつけてくれたニューカマー、ぐっぴん。彼は一体なぜ世界記録に挑戦し続けているのだろう。……というか彼は一体何者なのだろう。これらの謎を解き明かすべく、500円玉チャレンジを終えた直後の彼にインタビューを敢行した。


『Video Pizza』とぐっぴん

 “元気でポジティブ”をコンセプトに立ち上げられたチャンネル『Video Pizza』。その中で、自分が面白いと思う動画を厳選し編集から配信まで行うのが、現在ぐっぴんが行なっているメインの仕事。


「『Video Pizza』で今人気があるのは、凄技系ですね。スケボーで坂をもの凄いスピードで下っていく“ダウンヒル”系の動画とか、街の中を駆け巡る“パルクール”系の動画とか。あとは『やっちゃった!』みたいな、笑える失敗系の動画も見られています。まあ、一概には言えず、なぜこれがこんなに!? っていう謎に人気の高い動画っていうのもありますけど」


リサーチを元に様々な動画をウォッチし、人気が高いものの傾向を分析するのが彼の日課だという。

【スケボー】絶叫スピードのダウンヒル!高速スケートボード映像集
【パルクール】高層ビルの間を飛ぶ!?危険だけどかっこいい神業まとめ!

 もともと彼は、自身が運営するチャンネル『ぐっぴんチャンネル』(https://www.youtube.com/user/TheGoopin)の中で、動画を配信していたクリエイター。そこで作っていた動画は『Video Pizza』とはジャンルも趣も異なるものだが、


「“元気”や“ポジティブ”っていうコンセプトが僕に合ってたということでUUUMに声をかけて頂き、1月のスタート時から『Video Pizza』に携わっているんです」


とのこと。そういった経緯で今のポジションに配属されたようだ。しかし、そんな彼が不定期とはいえ、一体なぜ世界記録にチャレンジすることになったのだろう。

開かれた世界への道と「5-◯6」の偉大さ

 「海外の動画を上げるだけじゃなくて、なるべく低予算で製作できて、しかも皆に見られるような動画を作ろうという動きが『Video Pizza』内でありまして。世界記録ネタの中にはそういった条件に合う題材が多かったので、じゃあこれにしようって話でスタートしたんです」


そうして始まった世界記録シリーズ。しかしこれまで行ってきた挑戦の中には、「ミルクセーキ早飲みに挑戦」「コンビニのおにぎりを30秒で食べられるか」「消しカスを9m以上繋げられるのか」といった、地味にしんどそうなものが多く、数多くの失敗も重ねている。

【世界記録】ミルクセーキ早飲みに挑戦で〇〇した

https://www.youtube.com/watch?v=wpm53Lf7K-Q

コンビニのおにぎり30秒で食べきれない!?

https://www.youtube.com/watch?v=46s-o7SkRtw

【世界】消しカスを9m以上繋げれるのか挑戦

https://www.youtube.com/watch?v=TEp1opekeGs&t=2s

 そんな彼が初の大成功を収めたのが、前述のジッパー上げ下げ挑戦。動画を見ればお分かりいただけるが、そのジッパーを上げ下げするスピードたるや尋常ではない。記録達成後の動画の中で本人すら「信じられない」と一言。驚きを隠せなかったようだ。これまで同記録に挑戦し失敗した者は数知れず。察するに、その苦労は並大抵のものではないだろう。動画では語られなかった裏話や苦労について聞いてみよう。


 「あー、あれね。股間に『5-◯6』塗ったんですよ」


ご、5-◯6……!? 

あの自転車とか錆びついた金属部品とかに使う潤滑スプレー!? 


「うまくいかなかった1回目のチャレンジ後に、塗ってみようって話になって。実際使ってみたら思いの外ジッパーの滑りがよくなって、意外とあっさり記録達成できちゃいました」


そんな裏話があったなんて! 予想外の回答に戸惑う。

動画の中でその事実を伝えなくていいのかと野暮な指摘に対して、


「動画で『5-◯6』のこと出しちゃうと、広告のタイアップ動画みたいになっちゃうから良くないだろって話になってやめました」


とのこと。確かに……。でもそれって『5-◯6』パワーあっての記録達成だったのでは、という言葉はそっと飲み込んだ。

△ジッパー上げ下げを再現してもらった。お分かりだろうか。もはや手の動きが高速すぎて逆にスローモーションに見えている。ジッパーの滑りが良くなっているとはいえ、そのテクニックは本物のようだ。

食べ物早食い系はマジで危ない

 元来、体を張るタイプではなかったというぐっぴん。世界記録シリーズで特にしんどいのは“食べ物早食い系”だそうだ。


「おにぎりの時は辛かったです。結局失敗したんですけど、空腹時にやったらできたんじゃないかなと。昼飯食べた後に挑戦してしまったので、完全にコンディションが良くなかったですね」


……ゆ、ゆるい! ゆるすぎる! 

そもそも、そういうのってきちんとコンディションを整えて臨むものなのでは?


「“できるかできないかわかんないけどやってみる”ってスタンスなんです。担当者に『じゃあ、今日はこれをやってみましょう』って言われて、『じゃあ』みたいな感じで」


「世界記録系ってYouTubeで色々な人が挑戦してるんですよ。なので流行ってるものをリサーチして、それを意識した動画を撮れば皆に注目してもらえるんじゃないかって思って、実施するパターンも多いです。ミルクセーキの時なんて流行りまくってたせいで、店頭行っても売り切れだったんですよ。なので急遽自作のミルクセーキで挑戦することになりました。YouTubeはナマモノ。これだっていうのがあったら1日でも早く出すことが重要だし、スピード感ってすごく大切です」


なるほど、これも彼なりのプロ意識の表れだったのだ。そして彼曰く、「ミルクセーキの一気飲みもそうだけど、食べ物早食い系はマジで危ないんで、真似しない方がいい」とのこと。肝に銘じよう。

世界記録の本を読んだりネットで検索したり、自分がチャレンジできそうなものを常に探しているというぐっぴん。


「世界記録の本には、1リットルのレモン汁をストローで飲むとか、30秒でマスタード1瓶飲むとか、絶対体壊しそうな系もたくさん。あとは、本当に危険なやつとか特異体質の人しかできないものもあるし、ネタはたくさんあるけど選ぶのも結構大変です」


日常生活に差し支えが出そうなハードなものは避けつつ、今後も様々な記録に挑戦していくようだ。

YouTubeとの出会い

 小さい頃は、漫画家や絵描きになりたいという夢を抱いていたぐっぴん。高校を卒業してからはパチンコ会社や広告代理店で働き、デザイナーとして活躍していたと言う。


「小さい頃からずっと絵は描いていて。今も陰ながらイラストレーターになりたいっていう夢はまだあります。『ぐっぴんチャンネル』では自分の描いたイラストの動画を上げたりしてたし、今は僕のTwitter(https://twitter.com/guppin_pizza)でリプくれた人の似顔絵を描くってこともしてます。」


YouTubeとの出会いは、という質問をぶつけてみた。


「19歳位からデザイナーとして活動し始めたんですけど、その頃はずっとフリーランスとしてやっていきたいって思ってて。ちょうど当時は“これからは動画の時代”って言われてた時だったので、“YouTubeで活躍してるデザイナー”って謳えたら特別感も出るし面白そうって思って、YouTubeで投稿はじめました。」


そうして開設した自身のチャンネルでは、無◯良品などのおすすめグッズをはじめ、毎日の生活に役立つモノ・アイディア・ライフスタイルに関わる動画を数多く公開している。

自分がいいと思うものを世界に発信したい

「『Video Pizza』でも自分のチャンネルでもそうなんですけど、自分がいいって思うものを世の中に発信したいって想いがあって。ちょっと真面目な話になるんですけど、今ってネットの検索結果で上位に表示させるために、お金をかける時代じゃないですか。でも、そうすると本当にいいものが埋もれてしまう可能性がありますよね。そんな現状ってどうなんだろうって疑問に思ってしまい、だったら自分がYouTubeを通していいと思うものを世の中に出していこうって。まあ、世界とかはまたちょっと違うのかもしれませんが、そういった意識で動画を上げてます。個人的には今、『Video Pizza』で凄技系とかスケボーのダウンヒル系の数字が伸びてるのが嬉しいです。個人的にスケボーが好きなので、やっぱり好きなものが広がっていくっていいなって」


ちなみに、ぐっぴん史上全く見られなかった動画はこちら

『伝説の歌?! 動物が叩くめっちゃイケてるドラムリズム【シュール】』

https://www.youtube.com/watch?v=oBgxRiNkJEw&list=PULrUcFaBGxFTIr6RA1ToZRw&index=70

だそう。


「自分の中では黒歴史と呼んでいるんですけど(笑)。動物が口に棒を咥えて音を出す動画をひたすら集めて編集したんです。随分前に。で、動画をつなぎ合わせて1つの音楽というか、リズムパターンを作ったんですけど、編集が果てしなく大変で、やってるうちにゴールも見えなくなって……。しかも結果、努力が数字に全く表れずっていう。担当の人には『シュールで面白い』ってウケたし、意外と低評価は少なかったですけど。早食い系と種類は違うけど、あれはあれでしんどかったですね」

ぐっぴんにとってのYouTubeと未来

『Video Pizza』での活動、そしてこれからの目標や展望について聞いてみた。

「自分が良いと思うモノを紹介したい気持ちがあり、知名度が欲しくてやってきたYouTube。『Video Pizza』は自分の目標を実現するためのものであり、通過点であるとも思っています。あとは、やっぱり絵を描くのが好きなので続けたいですね。世界記録とかチャレンジ系に関しては、凄技系は難しいと思うけど、色々やっていって『この人めっちゃ頑張ってるやん、自分も頑張ろう』って皆が思ってくたらいいな。そして、その中で自分の色を出していけたらいいですね。シェアされる動画ってなんだろうって常に自問自答してるし、ずっと模索中。でも、ユーザーを楽しませるポジティブなものを提供するっていうのは、今後もブレずに続けていきたいです」

これまでやってきたことは様々だが、とにかく自分で情報発信していきたい、という強い想いは変わっていないようだ。

では、最後の質問。

「あなたにとってYouTubeとは?」

「人生を変えてくれたものであり、クリエイターにとっては“遊び場”みたいなものかな。色々なところからやってきたユーザーに僕がいいと思うものを広めて、それがその人にとって何かの気づきのきっかけになればいい。そういうことで、より良い世界にしていきたいなって思ってます。うーん。格好良く言えないけど、わかりやすくいうと“誰かが新しいものと出会うきっかけを作る場”ですかね。そんな感じです、多分(笑)」

■後記

ピザといえば大人数でシェアして食べるもの。ピザみたいに皆でシェアして楽しんでもらえる動画を広めていきたいというのが、『Video Pizza』の由来なのだと言う。ぐっぴんの将来の目標とも重なる、なんとも素敵なエピソードである。というわけで、マルチな活躍っぷりでユーザーを楽しませてくれる期待のルーキー・ぐっぴんと、彼の並々ならぬ情熱が注ぎ込まれた『Video Pizza』。どちらの動向からも目を離さないで頂きたい。